さて、前回の記事では、転職活動の「軸を決める」ことが、転職先を選ぶときに大事な「チェックポイントを設定する」ことだとお話ししました。
特に前編では「ハード編」として、「給料」「残業時間」「会社の安定性」など、数字で判断しやすいポイントにフォーカスしました。
今回は、「ソフト編」として、「仕事の内容」「働きやすさ」「やりがい」など、少し抽象的な要素について取り上げます。
給料とかはわかりやすいけど、働きやすさとかって何を基準に選んだらいいのかわからないんだよね。
確かにそうね。だけどそういう要素の方が長い目で見て「幸福度」を高めてくれるわ。
でも、こんなふうな人も多いんじゃないでしょうか?
- 仕事の内容を好き嫌いでしか見ていない
- 雰囲気でなんとなく判断してしまう
- そもそも、自分が何を求めているのかよくわからない
結局のところ、「ソフト」の部分にも「ハード」と同じように、多くの人に当てはまり、役に立つポイントがあります。
この記事では、それを転職につながりやすい「ソフトのチェックポイント」を紹介します。
前提として、私の記事のターゲットは「アラフォーではじめて転職を考えている方」で、ゴールは「収入アップだけではなく、幸福度の上がる転職」をして欲しいと思っています。
「俺はすでに何度も転職を経験しているし、どんな会社が良いかはわかっているよ」という方や、「今ブラック企業で体を壊しそう、とにかく早く脱出したい!」といった明確な目的がある人はそちらを優先して頂いて構いません。
もちろん、何が幸福かは究極的には人によるんですが、いきなり「あなたが本当にしたいことは何?」とか「自分と向き合え」とか言われても、迷子になってしまう人も多いんじゃないかなと思います。
それくらい、自分のことは自分では良くわからないものです。
(注意ですが、「自分が本当にしたいことを探す」こと、「自分と向き合う」ことが必要ないと言っているわけではありません!)
なのでここでは個人のばらつきになるべく左右されない、普遍的なチェックポイントを紹介しようと思います。
科学的に裏付けのある「幸福度を高める」仕事の選び方
このチェックポイントは主に鈴木 祐 氏著「科学的な適職」を参考にしています。
その本では科学的に裏付けのある「仕事の幸福度を決める7つの徳目」として以下のものを挙げています。
「自由」:その仕事に裁量権はあるか?
「達成」:前に進んでいる感覚は得られるか?
「焦点」:自分のモチベーションタイプにあっているか?
「明確」:なすべきことやビジョン、評価軸ははっきりしているか?
「多様」:作業の内容にバリエーションはあるか?
「仲間」:組織内に助けてくれる友人はいるか?
「貢献」:どれだけ世の中の役に立つか?
「科学的な適職」は科学的に根拠のある幸福度を高める仕事を見つけるための方法が数多く紹介されています。
転職時だけじゃなく、その後の仕事人生にも非常に役に立つので、ぜひ一度読んでみることをオススメするわ!
さて、「科学的な適職」は7つの徳目として紹介されていますが、中には転職活動時にはチェックしづらいものもあります。
例えば「仲間」です。
仲間とは自分と似たような価値観の人と一緒に働くと、幸福度が上がるというものです。
転職を考える理由の第一位が人間関係なんですから、人間関係が仕事をするにあたり大事であることは疑いようもないですね。
ですが、どうしても入社前に一緒に働く人のことを知るのには限界があります。
また人と人との付き合いなので相性の問題があったり、さらに組織は流動的なので入ったときは良かったけれど、数年で変わってしまったり。
私も2回転職してますが、2回とも採用面接をしてくれた上司は2年以内に別の部署に異動してしまいました。
その後に変わった上司は自分とは馬が合わず、「なんでこんなにつらい思いをして働かなくなくてはならないのか」と苦しんだ記憶があります。
新卒の就職では「配属ガチャ」「上司ガチャ」なんて言われてますが、転職でもその要素を完全になくすことは不可能だと思います。
少しでもガチャ要素をなくすには、それ以外の部分でしっかりと判断することで、必然的に自分の価値観に合う人が集まりやすいと私は考えています。
次に「焦点」は自分の特性を「攻撃型」「防御型」に分けることで自分にあった職能を見つける方法です。
サッカーで言うところのFWが向いているか、DFが向いているかのような感じです。
FW、つまり「攻撃型」は勝ちを行くこと、トップを取ることに力を発揮する特性
DF、つまり「防御型」は失敗を避けることに力を発揮する特性です。
促進予防焦点尺度というテストをすることで自分がどちらの特性を持つかを知ることができるのですが、実はほとんどの人は無意識に自分の特性を理解しています。
また、同じ職種の中にも「攻撃型」の活きる仕事、「防御型」が活きる仕事両方の側面を持ち合わせていることも多いので、この焦点についてはそこまで意識せず、参考程度で良いかなと思います。
促進予防焦点尺度はここに貼っておきますので、もし自分の特性がよくわからない、という方はやってみてもいいでしょう。
さて、残る「自由」「達成」「明確」「多様」『貢献」の5つの徳目についてはどうかと言うと、これはある程度「会社の仕組み」で判断することができます。
求人票であったり、面接でも「制度はあるか、どんな制度か、実際に使用されているか」を確認すれば良いのです。
今からお話しするのは、5つの徳目をさらに3つの転職時にチェックするべきポイントに絞って、より転職を考える際に実践的になるよう落とし込んだものです。
C.P.① 自分で仕事をコントロールできるか…「自由」
まず、自分の仕事にどれくらい裁量があるか、勤務時間や場所、残業時間を自分で調整できるか、これが仕事の幸福度に大きく影響します。
以前の記事でも触れましたが、何かの結果よりも「自分で決める」というプロセスそのものが、人にとっては幸福感をもたらします。
「ただ言われたことをやるだけ、責任もないが自由度もない」よりも「自分で考えて、自分で決めた行動を取れる、責任を持つ」ことが大切なのです。
求人票を見るときは、以下のようなことが書いてあるかチェックしてみてください。
例えば、
- 「〇〇製品の仕様と開発日程を決定し、QCDに責任を持つ」
- 「人材採用計画を策定し、採用プロセス全体をリードして、会社の成長に貢献する優秀な人材を確保する」
- 「製造プロセスの改善計画を策定し、生産効率向上とコスト削減のための技術的な決定を行う」
こんな内容があれば、かなり裁量がある、あるいは将来的に裁量が与えられる仕事だと考えられます。
また、「リモートワーク可」と書いてあれば、柔軟な働き方ができる職場かもしれません。
面接でも、自分の仕事にどれくらい裁量があるのかを確認してみてください。
例えば、こんな質問が役に立ちます。
- 「この職務内容で、自分の裁量の範囲はどのくらいありますか?」
- 「残業時間はどれくらい自分で調整できますか?」
- 「リモートワークは可能ですか?職場で実際にリモートワークをしている人はどのくらいいますか?」
C.P.② フィードバックをちゃんともらえるか…「達成」「明確」「貢献」
次に、自分の仕事に対してフィードバックが得られるか、そしてそれがどのタイミングでどのような形でもらえるかも重要です。
頑張っても評価されないと、モチベーションが続かないですよね。
フィードバックが上司の気分や好みに左右されるような環境だと、精神的にきつくなってしまうこともあります。
透明性があって、迅速にフィードバックをもらえる職場は、幸福度が高まりやすい良い環境です。
また、フィードバックは上司や同僚からだけでなく、顧客からの声も含まれます。
「この前の商品、とっても良かったよ〜」なんて、顧客の反応がダイレクトに届くような仕事は、モチベーションがぐっと上がりますよね。
面接で確認しておくといい質問はこんな感じです。
- 「パフォーマンスはどう評価されますか?具体的な基準やプロセスを教えてください。」
- 「お客様の声を聞く機会はありますか?」
C.P.③ 仕事を変化させる仕組みはあるか…「多様」
最後のチェックポイントは、多様な経験が積めるかどうかです。
どんなに給料が良くても、どんなに魅力的な仕事でも、同じことの繰り返しだとモチベーションが下がりがちです。
ポイントは「成長」→「発揮」→「学習」のサイクルを回せるかどうかです。
このサイクルがうまく回ると、モチベーションを維持しやすいですよね。
「成長」→「発揮」は新しい会社に入り、仕事を覚えていく内に自然と実感できると思います。
ですので特に重要なのはその後の「学習」のサイクルに繋げられるかどうかです。
社員教育に力を入れている会社は、このサイクルが回りやすいので、長く働くほどに幸福度が上がっていくでしょう。
面接での質問例はこちらです。
- 「スキルアップにつながる学習制度はありますか?」
- (すでに制度があると知っている場合)「〇〇という学習制度があると拝見しましたが、利用率はどのくらいですか?」
まとめ
転職の「軸を決める」ソフト編、いかがでしたか?
前編のハード編と併せてやってもらえれば、あなたが転職で確認すべきチェックポイントがわかります。
これはあくまで転職初心者に向けて、なるべく共通して幸福度の上がる転職をするために役に立つ箇所を取り上げています。
ですのでこれ以外の、例えば
「年収さえ上がれば何があっても耐えられる」
「どうしても実家の近くで働きたい」
「残業さえなくなればあとはどうなってもいい」
などなど、条件がはっきりしている方はそういったポイントを重視して頂いても一向に構いません。
大事なことは決めた基準に沿って客観的に比較することです。
これにより、少なくとも雰囲気に流されて意に沿わない転職をしてしまうことを防げます。
ぜひ活用してみて下さい!
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